ソーシャルエンタープライズを読み解くことで、最近の買収劇を考えてみる

MicrosoftによるYammerの買収OracleによるInvolver買収など、エンタープライズ寄りなソーシャルメディア関連のニュースが多数舞い込んできています。これらはすべて確かに「ソーシャルメディア関連」なのですが、その範囲が広い事もあり、ちょっとわかり難くなっている気がしています。

私達が提供している「co-meeting」というサービスも、ソーシャルメディアという言葉は使用していませんが、ある意味これらの一翼を担うものなので、なんとなく「わけの分からないもの」になってしまうのは困ります。ですので、現状この分野で最も一貫性のあるビジョンを描いている(と思っている)セールスフォースの「ソーシャルエンタープライズ」を軸に、現在の状況を整理しておくことにしました。

セールスフォースの「ソーシャルエンタープライズ」を軸に考えてみます
セールスフォースが昨年のCloudforceあたりから言い始めている「ソーシャルエンタープライズ」は社内SNSを代替する言葉では無いのですが、社内SNSを含有する言葉だとは思っています。また、この言葉は、サービスのカテゴリを表現しているものではなく、セールスフォースが世界のソーシャルメディアの状況を踏まえ、かつセールスフォースの現状および今後増えていくサービスの利用を通じて到達してほしい「企業の姿」を表現しようとしたものだと思っています。


引用元:セールスフォース・ドットコム 顧客の「声」を最大限に利用するソーシャルエンタープライズの実現を.

私は、2012年7月現在、企業のソーシャルメディアに関連する取り組みで最もわかり易く、一貫性を感じるのはセールスフォースだと思っています。上記の図で表現されている「従業員ソーシャルネットワーク」「カスタマーソーシャルネットワーク」「パブリックソーシャルネット」という3つの分類も理解できます。海外のベンダーの露出を見ていていつも唸らされるのは、自分たちが保持している材料によってあたかも全てを網羅しているかのように表現しているところです。ことソーシャルメディアに関して言えば、このセールスフォースの図が、もっとも秀逸だと思ってしまいます。

ソーシャルエンタープライズを実現する3つのステップ
セールスフォースは、ソーシャルエンタープライズに企業が到達するためのステップを、下記のステップで行う事を推奨しています。

  1. 顧客のソーシャルプロファイルの作成
  2. 従業員ソーシャルネットワークの構築
  3. 顧客と企業をつなぐカスタマーソーシャルネットワークの構築

このステップとそれを実現するラインナップ、セールスフォースの企業活動を読み解いていくと、競合各社の動きの意味が掴めると思います。まあ、裏をとったわけではなく、私の解釈なので、間違いがあればどなたか指摘してほしいですね。

ステップ1: 顧客のソーシャルプロファイルの作成
CRMを軸にしてきたセールスフォースらしいアプローチですし、この一貫したソリューション構成の中で、もっとも競合優位性をもち続けそうな分野です。

「顧客の」とありますが、この顧客の中には既存顧客と見込み顧客の両方が含まれていると思います。と言うのは、CRMによる顧客情報データベースの構築は従来から実施されていたと思いますが、それはソーシャルメディア普及以前の販売活動に即したもので、既存のチャネル経由の情報しか蓄積されていません。ですので、セールスフォースは自身が提供するサービスを活かして、既存、見込み問わない顧客のソーシャルプロファイルを現存のパブリックソーシャルネットワーク(Twitter, Facebook)から取得せよと言っています。

そのために提供、拡充している機能やサービス、そして施策が下記ですね。

  • Radian6 (ソーシャルメディアの追跡とコミュニケーション、CRMとの連動)
  • Buddy Media(ソーシャルマーケティングプラットフォーム、昔Crowyで目指していた姿を思い出す。プロファイルの管理からコミュニケーションダッシュボード、統計情報など、顧客との関係構築を支援する統合プラットフォーム:2012.7.17追記)
  • Desk.com (ヘルプデスクサービス、Assistlyを買収後Desk.comと改名して提供。zendeskの競合で、メール、チャット、電話、Facebook、Twitterに対応、もちろんCRMと連動)
  • Twitterとの戦略的グローバルアライアンス(Twitterのリアルタイム情報の取得制限は年々高まっているが、提携する事でそれを解消、Salesforce関連サービスは、ことTwitter情報の取得に関しては競合他社に対して大きなアドバンテージを持つ)

と言う事です。他にもあると思いますが、ソーシャルメディアからCRMに集めるためのチャネルの全てを押さえようとしているイメージですね。Radian6やDesk.comは、それ単体でも力を持つサービスだと思いますが、裏側にSales CloudやService Cloudを持っているため、その影響力が高まってくるわけですね。

ステップ2:従業員ソーシャルネットワークの構築
従業員ソーシャルネットワークの構築は、つまり社内SNSの構築を指します。ソーシャルプロファイルの取得は、そのまま企業に流入する顧客情報の増加を意味します。そのため、流入する情報の共有と処理のスピードを向上させなければ対処が出来ません。そのスピードアップのために、従業員ソーシャルネットワークの構築が必須だと言っています。

この理屈は、FacebookやTwitterを利用して情報のシェアやコミュニケーション、情報収集を行っている人にとっては説得力があると思います。既存のメールや対面、報連相手段では、まったく追いつかないだろう事も想定できます。つまり、従業員ソーシャルネットワークを構築せずにソーシャルプロファイルを取得のみを実施しても、情報が増えていくだけで意味が無いというわけです。

で、従業員ソーシャルネットワークの構築を実現する要になるのが「Chatter」です。Chatterが関連する全てのデータをフォローしたり、シェアしたり出来るのもCRMに蓄積されていく情報をスピード感をもって処理するためです。

そのためには、Chatterを利用したコミュニケーションスタイルを企業内に定着させる必要があるわけですが、社内SNSの導入でよく語られる「社内の風通しを良くする」や「アンオフィシャルなコミュニケーションを活性化させる」といった目的とは異なり、完全に業務に直結したコミュニケーション手段としてChatterを利用することを進めているわけですね。

現実に実現しているユーザーがどれだけいるのかは分かりませんが、私個人としては、この用途での事例が増えてくれる事を強く期待しています。

ステップ3: 顧客と企業をつなぐカスタマーソーシャルネットワークの構築
そして、最後がカスタマーソーシャルネットワークですが、これは前述のSTEP1、2の延長上で機能するものです。パブリックソーシャルネットワークから常時流入する情報を自社の製品情報や商談の進捗状況と連動したり、ソーシャルプロファイルに集約したりしながら従業員ソーシャルネットワークで解決して行動に移す。その過程は社内外のソーシャルネットワークが、セールスフォースのサービス群を経由して融合する事を意味します。上に貼った図が円形なのも、この一連の活動が継続的なものだからですね。どれか1つが欠けても実現出来ません。ステップ1で紹介しているRadian6Desk.com、そしてBuddy Media等は、むしろこのステップで真価を発揮するものですね。

もちろん、セールスフォースが提供しているサービスを利用せず、その他の様々なサービスを組み合わせても実現可能ですが、1社で一貫して提供出来ているのはセールスフォースだけだと思いますし、この一連の流れを説明出来ているのもセールスフォースだけだと思います。

ユーザー事例として、この全体像を本当に実現出来ている企業がどれだけあるのかは分からないのですが、話を聞いていたり、自分が対応を受けていて感じるのはセールスフォース自身は実現出来ている感がありますね。

ここ最近のMicrosoftおよびOracleの買収の位置づけ
と、言うわけで、ここ最近の2つの買収話を整理すると、ここ最近で話題になったニュースが2つあります。

ここまで書くと、敢えて説明する必要は無いかもしれませんが、マイクロソフトのYammerの買収はChatterを意識した買収、つまり「従業員ソーシャルネットワーク」の部分ですし、Oracleの買収劇は、セールスフォースとは網羅範囲が異なりますが、「パブリックソーシャルネットワーク」への対応(Buddy Media等を意識している:2012.7.17追記)に特化した内容だと思っています。

どちらも「ソーシャル」という言葉を含めていますが、一方は企業内コラボレーションのためのツールで、もう一方はマーケティングツールです。最も影響力のあるセールスフォースが、その両者を見事に一体化した内容で表現しているため、その境界線が曖昧になっているわけですね。

ちなみに、私達が提供している「co-meeting」というサービスは、YammerやChatterと同様に、企業内のコラボレーションやコミュニケーションを支援するためのサービスです。私個人としては、上記における従業員ソーシャルネットワークの構築や、それを利用して成果を上げる「企業内の動き」に興味があります。もちろん、マーケティング寄りの動きにも興味はありますが。。。

そういう意味で、顧客との関係構築や販売活動に関わる情報量が増えていて、そのための体制作りのために「従業員ソーシャルネットワーク」を構築して生産性を上げる。こういった取り組みや事例が増えてくれるのはありがたいです。

この分野をもっと活性化させていきたいですね。

米国のクラウド/ソーシャルネットワーキングの「究極のパワーユーザー」事例を読んで感じたこと

CIO Onlineで今朝公開されていた記事です。

正式な本社を持たずITスタッフもいない米国ガーネット・コンサルティングの30人の常勤コンサルタントは、まさにこの業界におけるクラウド/ソーシャル・ネットワーキングの究極のパワー・ユーザーと言えよう。

引用元: オフィスレス時代の先陣を切るガーネット・コンサルティング – 業務プロセス改革 – STRATEGY – CIO Online.

究極のパワーユーザーとあります。

情報共有やコミュニケーションにYammer。提案活動や作業状況等の情報共有や実業務の推進にSalesforce.com。リクルート活動にJobsience(これは知らなかった)やLinkedInを利用し、Google Appsを利用することでドキュメントの作成/共有も網羅しています。

すべての業務をクラウド上のサービスを利用し、有償利用しているため、利用料は相応の額になっていると思いますが、利用人数が30名ですから、記事内にもあるように、同種のシステムをサーバーを上に構築して運用する費用を考えたら遥かに安価で構築できているのも事実でしょう。

この事例は、これらのサービスをフル活用しているという意味ではとても興味深く、国内でオフィスレスも含めて実施できている企業もそれほどないような気もしています(あったらすみません)。ただ、この記事を読んで自社での実現が不可能だとは思わないでしょうし、この記事に近い働き方をしている企業もあるのではないですかね。

個人的には、米国でのオフィスレス+各種サービスの「究極の」利用事例として30名規模の企業の事例が記事になっていることにちょっと安心しました。一歩二歩は遅れているかもしれませんが、果てしなく遠い差ではない。そして、これらを実現しているのがクラウドサービスですから、国内の企業であれ「やる」と決めてしまえば、即実施要素も多いのではないかな。と。これが、数千人、数万人の規模で実現されていたらビビりますけど。

オンプレミスのパッケージ導入が中心の時代においては、米国での事例を国内で実施するためのタイムラグは大きかったのでしょうが、現在は導入のための技術的な障壁はクラウドの力によって大分小さくなっている。やろうと思えばすぐに出来るわけですよね。

国内での同種の利用事例がどのタイミングで出てくるのか、今後の興味はそんなところです。

Yammerを使い続けて思うこと②:チームで社内SNSを利用する価値

前回の記事(Yammerを使い続けて思うこと:実務で使った方が社内SNSは素早く定着する?)でも書きましたが、Yammerを利用したのは、チームメンバーが関わっている仕事の内容/進捗状況の可視化が目的ですが、継続して利用していると、いくつか副次的な効果が見えてきました。これらは少人数のグループでYammerを利用した場合の効果で、かつ一般的な内容だとは思うのですが、自分の備忘録としての役割も兼ねて、書き残しておきます。

  1. チームメンバーのタスク、それに伴う課題、解決策の共有
  2. アウトプット(成果物)の質の向上
  3. タスクに対するチームメンバーの当事者意識の向上
  4. 情報共有のスピードアップ
  5. 個々のストレスの分散
  6. チームの結束力の向上

1. チームメンバーのタスク、それに伴う課題、解決策の共有
導入目的がこれでしたので、解決してくれないと導入の意味がないのですが、大きな改善が図れたと感じています。Yammerにそれぞれが行っているタスクの状況を書き込むことで、その時点、もしくはその当日にそれぞれが何を実施し、何に悩んでいるかについてはチームメンバー全員が共有できるようになったと感じています。それも、ほぼリアルタイムで。

仕事の過程が見えるようになるため、成果物だけでは知ることの出来ないタスクの背景やそこに隠された課題等も見えるようになります。すべてのタスクを全員でこなすわけではないため、外部の人間の回答まで他のメンバーが行うことはほとんどありませんが、状況の説明程度は出来るようになります。背景を知っていると、回答して良い範囲もわかるようになるんですよね。それは大きい。

2. アウトプット(成果物)の質の向上
Yammerには外部に提出/送信するメールや各種成果物も共有されます。Yammerに添付してしまうものもあれば、ファイルサーバーのパスを貼付けるケースもどちらもありますが、基本、チームメンバーの誰かが自然と確認するようになりました。当然その過程で、誤字等のチェックや内容のわかりやすさの確認、個々が持つスキルに応じた指摘事項等、様々なやり取りがなされます。

従来であれば、タスクの担当者が意識的に行わなければ出来なかったチェック/ダブルチェックが自然と働くことになり、アウトプットの質も向上しているのではないかと思います。まあ、この点に関しては判断するのは自分ではなく、周りなのでしょうが。ただ、意識的にチェックする習慣を付けようとしているわけではないため、すべてのタスクの質が上がっているかというとまだ未知数です。

3. タスクに対するチームメンバーの当事者意識の向上
「世の中には知らない方が幸せなこともある」と、よく言われますが、まさにその通りです。知らないことで幸せな人生を送れるのであれば、それにこしたことはありません。知ってしまうことは、自分の行動や思考が、その事象に何かしらの影響を受けることになり、それがプラスに働くこともあれば、その逆もあり得ます。

と、人生についてはそうかも知れませんが、仕事については異なります。基本的にはチームの仕事は連帯責任です。個々の仕事の分担はもちろんありますが、それは内部的な話で、外部から見たら関係ありません。経験則ですが、他人事としている、もしくは他人事としたい仕事こそ、その後トラブルに発展することが多いような気がするため、極力共有し、前に進める努力をしてしまった方が無難です。そのためには、それぞれの仕事に対する反応を、どれだけ当事者意識をもって進められるかにかかり、Yammerによる仕事のシェアは、そう言ったことにも効果を発揮します。

当事者意識がつくというよりは、半ば強制的に「知る」ことになるわけで、知ってしまった以上はある意味当事者なわけです。全員一致で先延ばしにすることもありますけど。。。

4. 情報共有のスピードアップ
仕事の状況もそうなのですが、直近の仕事と関係のない周辺情報の共有も圧倒的に促進されました。個々がインターネット上で見つけたニュース、参加したセミナーの情報、各種ミーティングや外部との打ち合わせでの出来事や議事メモ。これらは、従来であればメールや口頭で行われてきたことですが、それぞれある程度まとめなければ共有がし難く、タイムラグや未共有であることが多かったと思われます。

Yammerによるコミュニケーションが活性化してくると、これらの情報の共有速度が自然に向上します。即時性が重視されるというか、重視も何もなくさっさと共有するようになっている気がします。足りない情報は別に合っていい。なぜなら、足りなかったり聞きたい情報があれば周りが質問するからです。質問されたらそれに答えることで情報が補完されていくわけです。

だれにも質問をされなければ、別に深堀をその時点では必要としなかった事象だったということになり、その情報をまとめることに時間を割く必要もなくなり効率も良い気がします。

5. ストレスの分散
解消するわけではないですが。。。 分散にはなります。大きな仕事や厄介な仕事が発生すると気持ちが重くなります。全てを自分で受け止めなければ行けない気分になり、その重さが結果として仕事の仕掛かりの遅さにつながってしまうこともあります。そう言うときはすぐにそれをシェアしてしまう。そうすると、ちょっとは気が楽になるものです。そして、時には着手や解決のための糸口が見つかったり、何となく後押ししてもらえることだってあったりします。

他愛のないことなのかもしれませんが、自分が勝手に抱えた「重さ」を書く場所があることは重要だと思っています。こういうことは、元々は飲み会やタバコ部屋、給湯室等で行われてきたコミュニケーションなのかも知れません。

———というわけで

ヒヤリング等をしたわけではないので、基本これらは個人的な感想です。

Yammerで実施していることの多くは、Yammer利用以前にも長く課題としていたことです。もっとちゃんと報告をしなければ、情報周知を心がけなければ、常にちょっとしたレポートでもまとめてシェアしなければ。。。などなど、数え上げればキリがありません。そして、各種シェアはタスクの成果物とは直結しないため、そのプロセスが面倒であればあるほど、プライオリティが下がってしまい継続しないことが多かったような気がしています。その結果、シェアすることによって得られる価値や効果を、理屈では理解していたものの、それを体感するところまでたどり着けなかった。

前回の記事で、ツールは何でも良かったと書いたのですが、利用が定着したのはツールとしてのYammerの力です。Yammerの様な軽快で参照性が高く、モバイルにも対応したサービスだからこそ継続/定着し、今回書いたようなことが体感できたのだと思います。そう言う意味ではツール(Yammer)の力は偉大です。

とは言え、とっかかりの普及や定着の為に必要な機能/プロセスは、チームの文化や外部環境、メンバーのリテラシ等にも大きく影響されると思います。今回、自分たちはチームのニーズやYammerの機能改善状況を含め、偶然「機が熟した」ためにYammerを利用しましたが、時期がずれていたらわかりません。

このカテゴリのサービスやツールは、ちょっと目を離すと大きく改善されていたり、全く別のカテゴリのサービスの中に同種の機能が用意されていたりすることもあります。定着の鍵はそれぞれ異なると思いますので、あれこれ試して、定着するまでしつこくメンバーに紹介し続けるのも一つの手段なんでしょうね。

個人的には、Yammerを利用して行われるコミュニケーションスタイルが普及して、どこの誰とでも同じような感覚で仕事が出来るようになったら良いなと、思ったりしています。

そんな遠い未来ではなさそうですが。

Yammerを使い続けて思うこと:実務で使った方が社内SNSは素早く定着する?

企業向けFacebookとも言えるYammerを使い始めてもう1年半くらいになります。継続して使い続けてみると、あれこれ見えてきたことがあるので、今回はそれをまとめてみました。どこかで話す機会も当面なく、この類いの話はすぐに陳腐化するので、とりあえず全部書いてしまおう。

Yammerについて
Yammerは、Facebookに近いソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)を、企業内で利用できるインターネットサービスです。基本的に、利用するためには自分が所属する組織、グループのユニークなドメインが必要となり、初期利用時にはドメインを入力することで、ネットワークと呼ばれるドメインごとのSNSが出来上がります。

Yammerにはドメインに紐づいたネットワークの他に、コミュニティ(2012.628追記:現在の名称は「External Network)と呼ばれるドメインとは独立したネットワークを作成することができるのですが、コミュニティはどこかしらのネットワークに所属していないと作成できません。ただ、コミュニティメンバーから招待を受けることで、GmailやHotmailのような個人アカウントのみ保持している人でもYammerを利用することが可能です。

Yammerにできること
Yammerを使い始めた当初は、国内でTwitterが普及し始めた頃だったこともあって、社内で利用できるTwitterのようなイメージを持っていたのですが、どちらかと言うとTwitterよりFacebookに近いです。UIデザインもほとんどFacebookですしね。また、Yammerの機能を眺めていても、Twitterとは異なっているのがわかります。

  • 基本実名登録で、細かいプロフィールを記載できる
  • 投稿文字数の制限がない(Twitterは140文字)
  • ファイル添付が可能(画像、Office文書、動画等には専用のビューアーあり)
  • ネットワーク内にグループが作成可能(ネットワーク内への公開・非公開の設定も可能)
  • テキスト投稿以外に各種ツールが用意されている(投票、イベント、リンク、質問)
  • “Like” がある
  • Link(Webページ)のシェアができる
  • オンラインのメンバーを確認できる
  • 各種デバイス用のアプリを提供(iPhone, iPad, Android, Blackberry, PC)

ゲームやFacebookアプリ、そしてチャットを除いたほぼすべての機能が網羅されているといっても良いと思います。また、Yammerがコミュニケーションを取りやすくするために考慮したと思われる独自の仕様や機能もいくつかあります。

  • ドメイン外の人を招待することが可能なドメインとは異なるネットワーク(コミュニティ)を作成できる(2011.9.9追記:現在はExternal Networkと名称が変更されたようです
  • コメント(返信)を指定したコメントが可能(Facebookはできない
  • 投稿のブックマーク機能

コミュニティは、プロジェクトや勉強会など、企業を越えた活動で利用する際にその価値を発揮します。グループに似ていますが、グループが同一ドメインのメンバー追加しかできないのに対して、コミュニティは外部の人間を追加できるため、その用途が広がる訳です。

あれこれ書きましたが、Facebookと同種のコミュニケーションを企業内で利用するためのサービスだと捉えていただければよいかと思います。

チームの仕事の状況を共有するためにYammerを利用
社内SNSは、mixiやTwitterなど、実名/匿名とわない不特定多数のコミュニケーションを楽しむ文化を、企業内にも取り込もうとする動きから始まっていると思っています。そのため、業務を遂行するためのコミュニケーションのためのツールとしてよりも、企業内の非公式なコミュニケーションを促進し、通常の業務では生まれないようなアイデアやシナジーを生み出すことを目的としていることが多いような気がしています。

ただ、私たちがチームでYammerを利用することを決めたのは、別にそういった高尚な理由ではなく、チームでありながら独立した仕事をパラレルで実施することが多い中で、それぞれの仕事の状況をチームメンバーが把握できる手段と環境が欲しいがために利用しました。

ですので、別にツールは何でも良かったんです。仕事の状況をササッと記載することができ、気になることがあれば即座にコメントをしたり、そのままディスカッションしてしまったりする。不在時に電話がかかってくれば、メモの代わりに情報を伝達するために使う。

こういったことは、別にメールでもできないことはないのですが、メールにはチーム外からの情報が混ざってしまうことと、メールの管理は基本個人毎に行われることになるので、メンバー全員が常に同じ情報を見ることはできないことが問題です。ある人は既読メールを削除してしまうこともあるかもしれませんし、ある人はしっかり分類をして管理しているかもしれない。同じ情報を同じ配置で共有することはメールではできないんですね。

では、自分たちに何が必要だったかと言うと、下記程度のことだったと思います。

  • シンプルな操作でチーム全員にメッセージ、ファイル、リンク等を共有し、ディスカッションができる
  • 共通の画面で履歴を確認・検索ができる
  • スマートフォンやその他モバイルツールを利用して、いつでもその内容を確認できる
  • メールによる投稿、コメント、通知機能が備わっている

何でも良さそうって思う人も多いと思います。実際そうだと思います。メンバーがストレスなく利用できるものであれば何でも良かった。私がYammerを利用したのは、既に自分がYammerの利用にかなり慣れていたことと、メンバーがそれぞれ保持しているスマートフォンのためのアプリや利用手段が提供されているものが、他になかったからです。

Yammerをどう使ったか
では、具体的にYammerをどう使ったかですが、下記のような用途で利用しました。

  • 各々のタスクの進捗状況と課題の共有の対応手段のディスカッション
  • 各種アウトプット(資料、メール文面)のレビュー
  • 伝言メモの代わり(電車遅延、電話メモなど)
  • チーム外の会議、外部イベント/セミナーのリアルタイム共有
  • トラブル、緊急事態の即時共有と対応のためのディスカッション
  • 各種ニュース、気になるWebページ、その他各種情報の共有
  • 雑談

こう書いてみると、もはやチーム内のコミュニケーションの大半を網羅しているようなものなんですよね。別に席や勤務地が離れているわけでもありません。従来であれば、これらの大半は朝晩に行う朝礼や夕礼、定期的に開催する進捗会議で行っていたことですが、なかなかこれらのミーティングは機能しません。機能するのは、チームメンバーの全員が同じ仕事をしている場合のみで、それぞれが異なる仕事をしている場合、進捗会議ですら全員の仕事の状況を把握するには至らず、重要度の高い事項をピックアップして行います。

一方、Yammerを利用してこれらのシェアを行う場合、シェアするタイミングすべて都度です。その事項が発生した瞬間に全員に周知します。そのすべてに対してメンバーが反応するわけではありませんし、基本その義務づけも行いません。しかし、メンバーは「いつものメンバー」ですので、必要に応じたコミュニケーションは自然と生まれます。

定着のきっかけはメンバー共通のトラブル 
利用当初は、半分強制的に利用が開始したと言っても良かったと思います。情報共有の必要性は共通認識として持っていましたが、既存のメールや口頭といったコミュニケーション手段は当然残っていますから、Yammerを利用せずに他の手段を自然ととってしまうことも多々ありました。それは、別に既存の手段が良いからではなく、Yammerを利用することを忘れてしまうだけなんですね。ですので、最初の間は、「メールで送っても返信しないよ。Yammerに書いてね」みたいなことを言ってみたり、私から連絡もYammer以外ではしないようにすることで、少しずつYammerを利用する習慣が浸透していったような気がします。

そして、本格的にYammerがチームに定着したのは、メンバー共通のトラブルが発生し、その対応に関するディスカッションをYammer上で行ったことが大きかったと思います。投稿数は急速に伸び、1スレッドの投稿数も70〜100に上ります。利用スピードも加速するため、多少不慣れなYammerの利用方法などすべてクリアされてしまいます。

結果、Yammerをチームに導入してから3ヶ月程度で総投稿数は6000に迫ろうとしてます。営業日を単純に20日/月として換算すると、1日当たり100近くの投稿が発生している計算です。今では完全に定着したといって良いでしょう。

少人数のチームで実務で利用してしまった方が、定着スピードが早いのでは?
数ヶ月利用してきて改めて思いますが、Yammerのような社内SNSは、Twitterのようなマスで緩やかなコミュニケーションを目的にするよりも小規模のチームの実務で利用してしまった方が早いような気がしています。TwitterやFacebookの利用でもそうですが、様々な人々が見ている可能性のある場で発言をするのは初心者であれば勇気が必要ですし、慣れていても発言内容に気を使う必要があります。逆につかわずに継続していれば、どこかでトラブルに見舞われる可能性さえあります。

社内でもそれは同様で、全社員が見ている可能性のある場所で一個人が発言をするのは、それなりのプレッシャーがかかるものです。時間と慣れで克服もできるのでしょうが、それはそれで時間がかかります。

それに対して、チーム内のコミュニケーションはその敷居がありません。従来通りの間隔で、従来通りの言葉遣いで発言することができますし、実務で利用するわけですから、投稿するネタもとても豊富です。そして、活性化すればするほど、従来のメールとは異なるスピード感溢れるコミュニケーションから離れられなくなりますので、チームを越えたプロジェクトやグループでも利用したくなります(少なくとも私はそうです)。

そうすると、既にYammerに慣れた人がそれぞれのチームから参加し、新しいチームで利用したとしても、ある程度は最初から活性化した状態で利用が進むのではないかと思うわけです。その脇で、逆にひっそりと全社向けの場が提供されていれば、密にやり取りされているグループコミュニケーションに収まらない内容がこぼれ落ちてきて、ネタによっては一気に活性化する可能性もあります。

まあこれは、TwitterやFacebookの普及によって、人々がショートメッセージによるシンプルなコミュニケーションに慣れつつあることが前提になって起きていることだとは思います。上限50人のSNSであるPathAmeba Tappieや、グループ(ルーム)毎にプロフィールを分けてTwitterライクなミニSNSを作れるyouRoom等もグループに閉じたコミュニケーションの魅力や価値に焦点を合わせたものだと思っているのですが、これらの背景にはTwitterやFacebookの台頭があるわけですよね。TwitterやFacebookの実績を利用することなく「ショートメッセージによるコミュニケーションがすばらしいんだよ」と言っても、あまり受け入れられなそうです。

そして、既にその価値はキャズムを越えて、自然と多くの人が使うようになったわけですから、こういった社内SNS定着の最短距離も、ちょっと変わりつつあるのかなと、今身の回りで起きていることを見ていると、考えたりしてしまうわけです。

関連記事:Yammerを使い続けて思うこと②:チームで社内SNSを利用する価値